
赤ちゃんを抱っこ紐でだっこやおんぶをすることを、
専門的には「ベビーウェアリング(Babywearing)」と言います。
これは、欧米を中心に、育児や抱っこ紐市場で共通認識されている言葉です。
私が伝えている、ドイツのだっこの方法「Baby Tragen(トラーゲン)」も、「ベビーウェアリング」と訳されます。
「ベビーウェアリング」を知り、だっこやおんぶを学び始めた頃の私は、
「ベビーウェアリング」の背景に様々なものがあり、自分が学んだものはドイツの「トラーゲン」理論が軸になっているものだったのだ、ということに気付いていませんでした。
この違いはなんなのか?
それぞれの歴史と、私の活動の中でみえてきたことをお話しします。
ドイツのだっこ「トラーゲン」とその歴史
Tragen(トラーゲン)という言葉自体は「抱く・運ぶ」という日常語です。
1971年、にエリカ・ホフマンさんという方がメキシコの「レボソ」という布で自身の双子を抱っこしたことをきっかけに、抱っこひもとしてのベビーラップの開発がスタートしました 。
その後エリカ・ホフマンさんは、1972年にDIDYMOS社を創設。
雑誌 Sternでの紹介記事(1972年6月号)をきっかけに抱っこ(Tragen)文化の再評価が進み、多くのドイツの家庭に広まっていきました。
※当時の欧米は、自立を重んじる育児方法が主流で、子どもを抱いて過ごすといった文化が途切れていました。
やがて「Tragen」は育児・医療・発達支援・福祉などの分野にも応用されるようになります。
抱っこでふれあいながら過ごすだけでなく、赤ちゃんの発達を支えながら親の育児生活の助けとなる、実践的・理論的な方法へと発展していったのです。
「ベビーウェアリング」と「トラーゲン」
ドイツ語で「だっこ・おんぶ」を表す言葉が「Baby Tragen(トラーゲン)」です。
一方で、ドイツのディディモスや、抱っこひもの専門スクールDie Trageschule®(ディトラゲシューレ)などのサイトや文献を見ると、
英語で発信する際には「ベビーウェアリング(Babywearing)」という言葉が使われていることがわかります。
この「ベビーウェアリング」という言葉は、1980年代のアメリカで、
シアーズ博士が“愛着形成育児(Attachment Parenting)”の中で生み出した言葉です。
主に親子の愛着や心理的つながりを日常の中でもつことを目的に、抱っこひもを使った育児を推奨しました。
赤ちゃんの姿勢やだっこの際の注意点としては、「M字開脚」や「窒息防止」、「背中のサポート」など最低限の安全基準にとどまっています。
これが世界的に広まっていったのが、現在世界で一般的に認識されている「ベビーウェアリング」です。
(日本ではさらに、独自の視点がありますが、それはまた別の機会に。)
私の気付きと大切にしたいこと
私は幸運にも、「ベビーウェアリング」をこの両面から深く学ぶことができました。
そして、現場でだっこについて伝えながら、日本の育児支援現場と抱っこ紐支援の現状に気付いたのです。
ドイツの「トラーゲン」の実践には、愛着形成はもちろん、赤ちゃんの身体の発達や姿勢への配慮、さらには基礎治療やケアとしての活用まで含まれています。
ですが、この深さや可能性を日本の支援現場に伝えるのは簡単ではないこと、
また、この視点で開発された抱っこ紐、おんぶ紐が、日本ではほとんど知られていない現状も実感しました。
さらには、ベビーウェアリングやトラーゲン以外にも、だっこや抱っこ紐に対する考え方が混在していること。
あらゆる情報の中で、親子が迷い、「抱っこ紐難民」という言葉も生まれるほどであること。
このような現状を理解したうえで、抱っこ紐支援に向き合うことを、これからも大切にしていきたいと思っています。




